竹パウダーを用いた野菜栽培における土壌菌叢(その2)

研究担当者

東京聖栄大学健康栄養学部食品学科 教授 丸井正樹

研究期間

平成29年度

概要

葛飾区は都市農業における野菜の高品質化への取り組みに資するため、区内農地で行う野菜栽培試験の経過および結果等にかかわる調査研究を実施している。本学は葛飾区から平成28年度にこの調査研究として標記の研究を受託し、平成29年度も研究を継続した。平成28年度の本学の研究で、竹パウダーの施用によりホウレンソウの食味向上効果と土壌菌叢の異同が認められた。平成29年度は、竹パウダーの土壌改良効果を土壌微生物群衆構造の変化を見ることで明らかにすることを目的とし、PCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法による細菌叢および真菌叢の比較を行った。

方法

葛飾区内の2圃場にてコマツナおよびホウレンソウを栽培した。播種後、土壌表面に竹パウダーを厚さ5mm重ねて、その状態で栽培を行った。竹パウダーを施さない土壌で栽培したものを対象とした。栽培開始時および収穫時に土壌を採取し、菌叢解析に供した。

土壌DNAはISOIL for Beads Beatingキット(ニッポンジーン)により抽出し、μT-12 ビーズ破砕機(タイテック㈱)を用いて、3200 rpm45秒でビーズ振盪処理した。

細菌用および糸状菌用プライマーを用いてそれぞれPCRを行った。DGGEは森本ら1)の方法に従い、バイオラッド社のユニバーサルミューテーション検出システム DCodeを用いて行った。グラジエントゲルは密度勾配装置円筒型No.2((株)サンプラテック)で作成した。泳動後のゲルをGelGreen(富士フイルム和光純薬)で染色し、Visi-Blueトランスイルミネーター(Analytik Jena)を用いてDNAバンドを検出した。

結果と考察

土壌試料中の全DNAを純度検定した。各試料により収量に差はあったが、高分子画分バンドがクリアーに泳動されて、低分子化したシェアーバンドが比較的少ない良質な全DNAが得られた。

糸状菌のリボゾームDNA領域のPCR増幅では、PCR産物のサイズが348bpと短いため、伸長反応を省略した2STEPでのPCRを行ったところ、全ての試料にて目的サイズのDNAの増幅バンドが得られた。これらのPCR産物をNucleoSpin Gel and PCR Clean-upを用いて精製し、DGGEに供した。細菌のPCR増幅でもPCR産物のサイズが193bpと短いため、糸状菌と同様にPCRを行い、精製したものをDGGEに供した。

PCR増幅した糸状菌18SリボゾームDNAのDGGE結果から、竹パウダーを施用した土壌菌叢は竹パウダーを用いない通常土壌の菌叢と異なることが示唆された。すなわち、コマツナ栽培における竹パウダー施用の土壌では通常土壌で見られたいくつかのバンドがなく、新たなバンドが数本増えていた。ホウレンソウ栽培においては、竹パウダーによる大きな違いは見られなかった。細菌16SリボソームDNAのDGGE結果からは竹パウダーによる特徴は顕著ではなかったが、2箇所の圃場の全体的なバンドパターンが若干異なるように見えることから、圃場による細菌叢に差があると考えられる。

今回の結果ではDGGEゲルにアプライするDNA量が一定にできなかったため、厳密なバンド比較ができていない。アプライDNA量を正確に一定にすることと、画像解析ソフトウェアの使用によりバンドパターンを正確に比較する必要があると考える。また、PCRの増幅において、193bpと短い増幅領域しか得られていないことや若干のPCR副産物生成が見られたことなど、より信頼性の高い結果を得るためには改良すべき点がいくつか残されている。各バンドをゲルから回収した後、再度PCR増幅して、シークエンス解析とデータベース照合を行うことにより菌種の同定が可能であるので、特徴的なバンドについて菌種同定を行う予定である。また、複数試料の利用による再現性の確認も必要である。栽培野菜の官能評価と味覚センサーの利用、機器分析による成分検査の結果も加えて、竹パウダーの土壌施用の有用性を示すことが望まれる。

参考文献

1) 森本 晶,星野(高田)裕子、PCR-DGGE法による土壌生物群集解析法(1) 一般細菌・糸状菌の解析、土と微生物 62, 63-68(2008)