受託研究-「かつしかの元気食堂」推進事業に関する研究(令和3年度)

概要

健康を維持・増進するためには、エネルギーや塩分を取り過ぎないように注意し、栄養バランスの整った食事を毎日摂ることが大切になります。

葛飾区で推進している身近な飲食店等がヘルシーメニューや健康を配慮した食に関するサービスが提供できるように外食の食環境を整備する「かつしかの元気食堂」推進事業に対して、本学は、ヘルシーメニューの開発や効果的な普及、啓発方法、具体的な事業評価に関わる調査研究を受託し、実施しています。「かつしかの元気食堂」推進事業では、地域の身近な飲食店等で一定の基準を満たすヘルシーメニューや食に関するサービスなどを提供する「わたしの街のえらべる食堂」と、充実したヘルシーメニューとサービスや健康情報等の積極的な発信を行う「かつしかの元気がでる食堂」を拠点として整備することとしています。本事業は平成26年度から実施しており、本年度が8年目となります。

>>かつしかの元気食堂について(葛飾区ホームページへリンク)

研究目的

葛飾区は外食の食環境整備、地域に根ざした食育の推進、区民の健康の維持・増進を図ることを目的とした推進事業(かつしかの元気食堂推進事業)を展開している。

本事業は、①身近なところで健康・食生活に関するサービスを提供する「わたしの街のえらべる食堂」、②地域の食育推進の拠点となる「かつしかの元気がでる食堂」を通して、葛飾区民に対し、健康的なメニューの提供を図り、健康づくりにつなげることを目的としている。

これまで③区民の野菜摂取量増加を応援する「プラス一皿の野菜料理があるお店」を加えた3 テーマに取り組む飲食店の拡大と普及を図り、令和元年度からは、「かつしかの元気な食応援店」として弁当・総菜店にも対象を広げて実施している。

令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により東京聖栄大学が受託したメニュー開発・コンテスト・試食会・フードフェスタ等イベントにおけるPR 活動は中止となったことから新作メニュー弁当特別予約販売会に変更して実施した。

令和3年度は、依然続く新型コロナウイルス禍において、初めて区内大型スーパー「イトーヨーカドーアリオ 亀有店」と葛飾保健所、東京聖栄大学の「産・管・学」連携の元、学生が開発した弁当販売を実施した。

「かつしかの元気食堂推進事業」の推進に資するため、東京聖栄大学は葛飾保健所との協働により、令和3年度も学生主体によるヘルシーメニューの開発、事業PR 用動画作成、認定店及び利用状況や今後の普及活動等に関する調査研究を実施したので報告する。

研究内容

1)「かつしかの元気食堂」認定店で提供するヘルシーメニューの開発及びレシピカードの作成。

ヘルシーメニュー8 種類以上開発し、その中から「野菜たっぷりメニュー」などを選び、クリアファイルに挟んだレシピカードを作成する。
開発メニューデータとレシピ集、カレンダー(データ)を作成する。

2) ヘルシーメニューの販売

「イトーヨーカドーアリオ 亀有店」における「かつしかの元気食堂」新作メニュー弁当特別販売会の実施

3)調査分析

「かつしかの元気食堂」認定店における栄養表示のためのメニューの栄養計算
店主及び利用者アンケートの調査分析
元気がでるメニューの買取調査の実施

4)「かつしかの元気食堂」の普及PR

5)「知っ得メモ」原稿データの作成

受託研究期間

令和3年度

受託研究担当者(役職等は令和3年度現在)

「かつしかの元気食堂」推進協議会 会長
東京聖栄大学 健康栄養学部 管理栄養学科 教授 小林 陽子(総括責任者)
「かつしかの元気食堂」推進協議会 学識経験者委員
東京聖栄大学 健康栄養学部 管理栄養学科 教授 風見 公子

分野別研究担当者

メニューの栄養計算・普及PR 活動・認定店及び利用者対象調査
東京聖栄大学 健康栄養学部 管理栄養学科 教授 小林 陽子
ヘルシーメニューレシピ開発・新作メニュー弁当特別販売会
東京聖栄大学 健康栄養学部 管理栄養学科 教授 風見 公子

研究協力者

東京聖栄大学 健康栄養学部 管理栄養学科

教授
宮内 眞弓
講師
吉田 真知子
助手
柴田 隆一
助手
中澤 和美
助手
工藤 彩佳
助手
小川 里帆
助手
勝倉 悠馬
助手
松下 麻衣

管理栄養学科 15、16期生

調査員

佐藤 ふく子
石川 理恵

撮影協力者

東京工芸大学 准教授 勝倉 崚太、勝倉ゼミ

かつしかの元気食堂における役割と位置づけ

かつしかの元気食堂における役割と位置づけ

ヘルシーメニューの開発、認定店向けレシピ及びカレンダー・レシピカード作成

(1)東京聖栄大学生が考える「野菜たっぷり元気食堂メニュー」の開発

メニュー開発は、本学管理栄養学科3年生が「給食経営管理実習Ⅱ」の授業で「元気食堂メニュー」をテーマに下記の基準に基づき作成し、12メニューを考案しました。

令和3年度 野菜たっぷり元気食堂メニュー開発
地産地消を取り入れたかつしかの元気がでるお弁当
対象 一般成人
基準
(1食分)
エネルギー量の規定はなし。
(常識的な1食当たりのお弁当のエネルギー量で作成すること)
食材 地産地消をテーマに東京都の食材・料理を必ず取り入れること。
様式 和・洋・中も自由。ただし、12個のお弁当で極端に偏ることのないようにすること。
主食
(主材料)
肉(鶏・豚・牛・その他)、魚、卵、豆も自由。
ただし、12個のお弁当で極端に偏ることのないようにすること。
野菜 野菜・きのこ・海藻140g以上は必ず使用すること。
食塩 食塩相当量の規定はないが、食事摂取基準の1食当たりの量(3.5g未満)を極端に超えないようにすること。料理ごとに調味%(塩分%)を必ず計算すること。
食材料費 食材料費の制限はなし。
ただし、お弁当として販売する際に一般成人が購入しそうな価格帯で考えること。

※クリック、タップで拡大画像を表示します

(2)東京聖栄大学生が考える「かつしかのベジ軽弁当・ベジ充弁当」

前記の12メニューを葛飾区と大学で設定した下記のかつしかのベジ軽弁当かベジ充弁当の基準に合わせ、前記の12メニューを6メニューにブラッシュアップしました。

地産地消を取り入れた元気がでるお弁当
名称 かつしかのベジ軽弁当 かつしかベジ充弁当
対象 活動量の少ない女性・シニア・体重が気になる方 一般成人・成長期の方・活動量が多い方
弁当の基準
(1食分)
主食・主菜・副菜の組み合わせとする
エネルギー450~650kcal
主食・主菜・副菜の組み合わせとする
エネルギー650~850kcal
主食 飯・麺類・パン
*参考:飯の場合は1食あたり150~180g
飯・麺類・パン
*参考:飯の場合は1食あたり170~220g
主菜 魚・肉・卵・大豆製品
*参考:60~120g
魚・肉・卵・大豆製品
*参考:90~150g
副菜 野菜・きのこ・海藻・いも140g以上
ただし、野菜量が全体の2/3以上とする
野菜・きのこ・海藻・いも140g以上
ただし、野菜量が全体の2/3以上とする
食塩 食塩相当量3.0g未満 食塩相当量3.5g未満

※クリック、タップで拡大画像を表示します

(3) 東京聖栄大学生が考える「野菜たっぷり元気食堂メニュー」・「かつしかのベジ軽弁当・ベジ充弁当」写真撮影会

一昨年度までは、7月のメニューコンテストと同日に「元気食堂メニュー」をレシピカードやカレンダー作成に使用するために写真撮影を実施していましたが、昨年に引き続き本年も、コロナウイルス緊急事態宣言に伴い、学内のメニューコンテストは中止としました。本年は7月10日(土)に写真撮影のみを実施しました。12+6の計18メニューの撮影のため、密にならぬように、メニュー開発に携わった学生の登校時間、撮影時間をずらしながら実施しました。写真撮影は東京工芸大学 准教授 勝倉崚太先生とゼミ生に協力願いました。

写真撮影会

写真撮影会

写真撮影会

写真撮影会

写真撮影会

写真撮影会

かつしかの元気食堂・元気な食応援店、葛飾区民を応援するカレンダーの作成

弁当は季節の旬を意識しながら12メニューを考案し、12か月に配置しました。カレンダーはかつしかの元気食堂・元気な食応援店に対してのみではなく、葛飾区のホームページからダウンロード出来るようにし、葛飾区民にも多くみていただけるように配慮しました。また、それぞれの月にQR コードを配置し、作り方を含めたメニューもダウンロード出来るようにしました。

カレンダー

カレンダー

カレンダー

カレンダー

カレンダー

カレンダーはこちらから ※外部サイト(葛飾区)へ移動します。

認定店及び葛飾区民に活用して頂くための「元気食堂メニューレシピ集」作成

認定店及び葛飾区民に向けて以下のレシピ集をまとめ、提供しました。1人分と10人分の分量を示しました。レシピはかつしかの元気食堂・元気な食応援店に対してのみではなく、葛飾区民に対しても応援する簡単なレシピを含んだ献立としました。本レシピもメニューカレンダー同様、ダウンロードできるようにしました。

メニューレシピ集

レシピ

レシピ

認定店及び葛飾区民に活用して頂くための東京聖栄大学が考えた「元気食堂レシピカード」作成

東京聖栄大学が考えた「元気食堂メニューレシピカード」として、主食レシピ2種、主菜レシピ2種、副菜レシピ8種を作成しました。野菜たっぷり、時短レシピとして、材料の分量は家庭用に2人分の重量(g)と概量と作成時間、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目について表示しました。また、野菜総量や、レシピに使用されている原材料について、アレルギー表示義務食品7品目、表示推奨21品目、計28品目アレルギー表示したほか、レシピのポイントについて表示しました。

レシピ

考察

今年度は、2段階でメニューを作成しました。まず、野菜たっぷり元気食堂メニューの開発は、地産地消を意識した東京野菜を用いた弁当とし、飲食店に加え、弁当・総菜店、家庭でも取り入れやすい健康的なメニューとして考案しました。更に、かつしかのベジ軽弁当・ベジ充弁当の基準に従い、12メニューをブラッシュアップして、6メニューとしました。食材は手に入りやすく、安価で、手軽にできる料理を多く取り入れ、野菜にはきのこ・海藻類も含めて140g以上で作成しました。また、必ずメニューの中に時短料理をいれることを約束としました。

来年度は、認定店や家庭で簡単に取り入れてもらえるレシピの開発をさらに進めていきたいと思います。時短料理を取り入れたことは、普及につながると考えています。

「健康日本21(第2次)」に示されている野菜の1日の目標量は、350g です。

そこで野菜たっぷりの基準は、1 日3 食で1回に食べる量の約1/3量(140g)以上としました。認定店に配布するレシピ集は単品でも使用できるよう作成しました。

料理カードには、材料(2人分の重量)、概量、作り方、エネルギー・栄養素表示、野菜総量の表示、アレルギー表示、レシピのポイント等を掲載し、出来るだけ見やすく配慮し、昨年度より調理時間を記載しました。

完成した料理の撮影は、東京工芸大学勝倉准教授に協力を頂きました。学生にとって料理の撮影は、初めてのことばかりでしたが、背景と、皿と料理のバランスが重要であることを学び、貴重な経験となりました。

試食会およびイトーヨーカドーアリオ亀有店での販売の実施

健康づくりのために「かつしかの元気食堂」を多くの区民の方に周知し活用してもらうため、「かつしかのベジ軽弁当・ベジ充弁当」5メニューをかつしかの元気食堂加盟店において販売していただきました。

また、イトーヨーカドーアリオ亀有店で販売したメニューに関しては、弁当の販売先のイトーヨーカ堂と弁当作成の武蔵野フーズと献立原案の代表学生がやり取りを繰り返しました。販売前に葛飾区役所で試食会を開催し、その後、アリオ亀有店で販売しました。

新作メニュー弁当販売先行試食会の様子
https://www.tsc-05.ac.jp/area_lecture/genki_restrant_news/

イトーヨーカドーアリオ亀有店での販売

日時
令和3 年11月27日(土)、11月28日(日)
会場
イトーヨーカドーアリオ亀有店
弁当販売数
150食×2日
販売状況
10時より販売を行い2日とも、12時過ぎには完売となりました。

本事業は、読売新聞、東京新聞、葛飾経済新聞、教育学術新聞、JCOM、セブン&アイホールディングフェイスブックのほか、様々なメディアで取り上げられました。

販売の様子写真:葛飾経済新聞

学生作成リーフレット

学生制作リーフレット

販売の様子

販売の様子

結果及び考察

葛飾区における食環境整備、区民の健康の維持・増進を図ることを目的とした「かつしかの元気食堂」推進事業の新メニュー開発に東京聖栄大学学生が関わって7 年目となります。本活動は「給食経営管理実習Ⅱ」授業の一環として取り組んでいます。

今年度は、初めて葛飾区とイトーヨーカ堂と大学の産学連携を取り、販売まで至ることが出来ました。報道も多くしていただき、例年より「かつしかの元気食堂」をPR することができたと考えています。しかしながら、一部の学生のみとなり、もっと多くの学生を販売まで関わらせたかったですが、それは難しかったです。教育としては、商品化する過程を、もっと大切にし、指導をしていかなければならないと強く感じました。

今後さらに認定店や家庭においてより作りやすく、安価で、調理時間が短いレシピ開発が望まれます。多くの店や家庭で、レシピが活用され、ヘルシーで野菜たっぷりのメニューが地域に広まれば、葛飾区の食環境整備につながります。大学としても地域の食環境整備の一助となるよう、努力していきたいと考えています。

栄養計算

「わたしの街のえらべる食堂」に訪問のうえ、メニューの食材料を計量し、栄養計算を行い認定内容の確認をしました。

調査方法

対象店舗で実際に提供されている料理を秤量法により、エネルギー量及び栄養素量の推定を行いました。レシピがある場合は記入の不備等を対象者に聞き取りをしながら食品名や重量の推定を行いました。揚げ物の吸油率、乾物の戻し倍率は、国民健康・栄養調査や文献を参考に重量換算した。汁物などの食塩相当量は、塩分計(デジタル塩分濃度計EB-158P, EISHIN 製)を用い、調味%から食塩相当量を算出しました。

日本食品標準成分表2017(7 訂版)に準拠した、栄養計算ソフトプログラムのエクセル栄養君Ver.9(建帛社製)にてエネルギーおよび栄養素量を算出し、基準と照らしてそのメニューの改善点・コメントを作成しました。

栄養計算状況

各店舗の主なメニュー5 品までとし、計20メニューの栄養計算を行いました。食事バランスガイド表示は、栄養計算ソフト(エクセル栄養君Ver.9)にて、バランスコマを作成しました。

対象店舗

エリア 業種 店名 調査日 計算メニュー数
亀有 定食 常磐仙食堂 令和3年 8月31日(火) 4メニュー
宝町 中華 えびす亭 令和3年 9月 3日(金) 2メニュー
立石 レストラン 旬の定食八十八 ウイメンズパル店 令和3年 9月 6日(月) 1メニュー
掘切 中華 中華料理 三河屋 令和3年 9月10日(金) 3メニュー
掘切 中華 中国料理 来集軒 令和3年 9月13日(月) 1メニュー
水元 定食 田舎っぺかあちゃん 令和3年10月 5日(火) 4メニュー
柴又 そば 鶯庵 やぶ忠 柴又帝釈天参道店 令和3年10月 7日(木) 4メニュー
立石 軽食・喫茶 軽食・喫茶カフェ Cha! Cha! Cha! 令和3年11月11日(木) 1メニュー

調査分析

事業評価のためのアンケート調査等を行い、集計、分析、報告書作成及び報告を実施しました。また、「かつしかの元気が出る食堂:認定店で提供されている元気が出るメニューがメニューの喜寿(主菜・副菜等で400~500kcal, 塩分3.3g 以下、野菜120g 以上の基準)内で提供されているか確認しました。認定店に訪問のうえ、メニューの食材料を計量し、栄養計算を行い認定内容の確認をしました。

「かつしかの元気食堂」認定店アンケート調査

「かつしかの元気食堂」認定店利用者アンケート調査

普及PR

令和3年度についても、令和2年度に引き続き各イベント等の中止が多かったため、「東京聖栄大学学生による元気食堂推進事業及び認定店PR 用動画」2本の作成を行いました。

テーマ1:「かつしかの元気食堂の概要とメニュー開発から特別販売会の結果」

元気食堂事業の事業説明・東京聖栄大学学生によるメニュー写真撮影からイトーヨーカドーにおける販売会までの紹介。元気食堂推進事業の目的や内容についてPR するとともに、3年次生が開発したメニュー開発、販売会の取組みをまとめました。撮影及び編集は3年次生が担当しました。

動画(3年次生作成)

テーマ2:認定店(4 店)における「元気食堂新作メニュー期間限定販売」~活気あるかつしかの元気食堂紹介~

学生考案メニューの販売をした区内認定店4 店舗を対象に店主等から元気食堂に申請した理由や提供したメニューについてのお客様の反応等を取材し、動画にまとめました。撮影及び編集は2 年次生が担当しました。

動画(2年次生作成)

その他

オープンキャンパスに来校した高校生に対して、パネルや知っ得メモの説明を通してPR を行ったほか、「かつしか知っ得メモ」の作成、葛飾区広報誌、ホームページ、Facebook、Twitter等でもPRを行いました。